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第116話
「……わかりました。では、お止めいたしません。もしも何か――そうですね、カップや花瓶など、ヒバリ様が意図せずに割れてしまった時はポリーヌ殿を通じてお知らせください。すぐに代えのものをご用意いたしますから」
まるで見本のように頭を下げた凪にふわりと笑う気配があった。声に出されぬそれに、自分の選択は間違いでなかったと知る。
「お心遣い、感謝します」
その言葉に小さく頷いて、では失礼を、と凪は踵を返した。その後ろ姿をヒバリとポリーヌがジッと見つめている。そして二回扉が閉まる音を確認して、ポリーヌがヒバリに向き直った。
「よろしかったのですか? 流石にこの部屋に耳は無いので、絶好の機会だと思ったのですが」
この部屋を盗聴などすればウォルメン閣下の機嫌を損ねるのは必定。探りを入れたいだろうサーミフもそこまで愚かでは無い。だがあちこちにサーミフが放った目はある。だからこそこちらが凪を呼ぶのではなく、凪からこちらに来た今こそが好機だとポリーヌは判断したのだが、ヒバリは結局何もしなかった。もうこんな機会は訪れないかもしれないというのに、なぜ? とポリーヌの視線が問いかける。それに気づきながら、ヒバリはそっとロールの背を撫でた。
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