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第117話

「……聞けば、その結果がどうであれ、あの青年に家族を売らせることになる」  ポリーヌの言う通り、今の好機を逃さず掴んでいれば、もっと早くに事態の収束を図れるかもしれない。予定よりも早く、ヒバリがわざわざあちこちを歩かずともウォルメン閣下の元へ帰れるだけのものが手に入ったかもしれない。だがそれをするには、どうにも凪は清すぎる。 「もう少しで全てが揃う。それを揃えてディーディアに渡せば、俺たちも屋敷に帰れる。本音を言えば、ナギ殿を俺につけるのをやめて欲しいところだが、それを言うとディーディア王子の疑いに拍車をかけそうだ」  本人が言う通り、凪はいたって普通の使用人だ。知恵に優れているわけでも、武術に優れているわけでも無い。そしてヒバリ同様、この国では少々目立つ身体的特徴がある。そんな彼を庇いながら調査をするのはディーディアが思うほど簡単では無い。なにより、ヒバリとて体術に優れているわけではないのだ。いざという時に自分の身を守れるか否かというような人間が、同じように体術に優れない人間を庇って命を持ったまま無事に全てを解決、なんて頭を抱えたって許されるだろう。けれど彼を遠ざけてしまえば、それがどんな理由であれ取り返しがつかないほどディーディアは彼を疑い、最悪は排除してしまう。国とは時に非常であることを、ヒバリはよく知っていた。

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