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第118話

「……たとえ全くの無関係とは言えずとも、ヒバリ様はナギ殿をお使いになることは考えておられないのですね?」  ポリーヌの言葉にヒバリはひとつ頷く。たとえ成人していようとヒバリからすれば凪はまだまだ子供だ。子供は守ってこそである。 「ヒバリ様がそのようにお考えなら従います。ですが……あなた様ももう、限界なのでは?」  キラ、と窓から差し込む月明かりに割れたガラスが光った。まっすぐに見つめてくるポリーヌにヒバリは苦笑を漏らす。 「そう深く考えることでも無い。たとえどうなろうと〝二十五歳の誕生日〟は永遠に訪れはしないのだから」  でも、そう、確かに――寒いな。  そっとロールを抱きしめる。頬を寄せればフワフワの毛がくすぐった。その感触に思わず笑みを浮かべた時、ブブッ、とほんの小さな振動がヒバリに伝わる。それにピクリと瞼が震えた。視線を向ければ、心得たようにポリーヌが窓を閉めカーテンを閉ざす。しっかりと閉ざされたそれを確認してから、ヒバリは懐から小さな機械を取り出した。ボタンを押した瞬間、トントン、トントン、と硬質な音が響く。これは声を出すなという合図だ。それを確認した瞬間、ヒバリは素早くこちらの音を遮断するボタンを押した。これでヒバリたちが声を出そうが、ロールが鳴こうが、不足の事態が起ころうが、向こうには何も伝わらないだろう。

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