119 / 119
第119話
相手は外にいるのだろうか、時折ザザッ、と雑音が入る。しかしおそらくは人通りの無い場所なのだろう、話し声以外の物音や足音などは一切聞こえない。
『――あの小ささだ。兎都の奴に間違いねぇって』
聞き覚えのある声だ。そのことにヒバリは眉根を寄せる。小さい、とは誰のことだろう。ヒバリか、それとも……。
『酒に混ぜたやつも効いてたしな。ほんの少量だってのに効き目は抜群。俺らにしたらちょーっと強い酒って感じしかしねぇけど、兎都の奴にゃぁ劇薬だからな』
酒に混ぜた、ということは、彼らが話しているのはヒバリのことだろう。まさか正体がバレてしまったのか、と目を細める。しかし次の瞬間、ヒバリは目を見開いた。
『ほんと、天使様様だぜ。この国じゃ証拠も残らねぇうえに、こっちに都合よく相手の記憶も吹っ飛ぶ。しかも不自然な吹っ飛び方じゃねぇから疑われもしない。都合が良すぎて腹を抱えたい気分だ。この調子でじゃんじゃんやれば、荒唐無稽だって思ってたこれも、案外上手くいくかもな』
本当にな、と数人でゲラゲラと笑う声が聞こえる。それに紛れるようにして一瞬だけ遮断を解除したヒバリはトン、と爪で音を鳴らした。それにトン、と相手からも応えるように音が返される。それを確認してヒバリは通信を切った。おそらくヒバリの命に従い、相手も撤退していることだろう。
ともだちにシェアしよう!

