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第120話

「……どう、なさいますか?」  もしも彼らの言う〝小さな兎都の奴〟がヒバリであるなら、これ以上ヒバリが表立って動くのは危険だ。ましてウォルメン閣下から許可が出ているとはいえ、これは本来ディーディアの問題であってウォルメン閣下が全責任を負う案件ではない。ヒバリの身が危険に晒される可能性が少しでもあるのなら、今ある情報をディーディア側に渡して仕事は終了とし、さっさとセランネへ――ウォルメン閣下の元へ戻るのが最適解だろう。その最短をポリーヌが考え始めていることも、ヒバリは理解している。だが彼は頷くことができなかった。 (……どこで失敗した?)  失敗。胸の内で呟いたその言葉にグニャリと心臓が歪に蠢く。縋るようにロールを撫でた。 「……こうなっては多少危険を冒してでも一気に調べ尽くすしかない。情報と証拠さえ揃えられれば、後は捕まえるのも尋問するのもディーディアの仕事だ。何も気にすることなくセランネへ帰れる」  警戒はすべきだが、こちらがあちらの会話を聞いていたという事実は少しも気取らせてはならない。慎重にしなければ。  頭の中であれこれと忙しなく策を考えるヒバリに、ポリーヌは眉根を寄せる。これは良く無い傾向だ。

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