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第123話
「割ったガラス? それがテーブルに散らばっていたのか?」
報告する侍従長を前に、サーミフは怪訝な顔をした。人払いをしたこの部屋にはサーミフと侍従長の二人しかいないため、静かな沈黙が落ちる。クルリ、クルリとグラスの中のワインを揺らしながら、サーミフは眉間に皺を寄せた。
「そのガラスが元は何であったかわからないのか?」
ガラスと聞いて考えられるのは様々ある。花瓶、コップ、ボウル、細工物に――小瓶。
だが侍従長はゆっくりと首を横に振った。
「残念ながら不明でございます。監視していた者によると、割られた時は窓を閉め、カーテンも閉ざされていたとか。その後ポリーヌ殿が窓とカーテンを開き、テーブルに散らばった破片やナギの姿を確認することができたようですが、何を割ったのか、ナギと何を話していたのかは不明です」
ガラスは粉々に砕けており原型を留めているものはなかったと侍従長は言う。それにサーミフは深々とため息をついた。
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