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第124話

「ヒバリ殿はもちろん、ポリーヌもそういった気配には敏感だ。近づいて監視することも、盗聴器や隠しカメラを部屋に仕込むこともできない。彼らに過分な疑いを抱かせないためには必要なことだが、こう事が進まなければもどかしく感じるな。……そういえば、この件に関してナギはどう言っている? 少なくともテーブルに破片が散らばっている状態でヒバリ殿と会っているのだろう?」  盗聴器で会話を聞くことはできずとも凪の記憶がある。忘れっぽい性格とはいえ、流石につい先程のことを覚えていないわけもないだろう。そう思って侍従長に視線を向けたが、彼は静かに首を横に振った。 「何も申しませんでしたな。偶然を装って廊下で鉢合わせし、やんわりと探ってみましたが、ナギはヒバリ様のお名前すら出しませんでした。何か割れるような音が聞こえたとも言ってみましたが、〝気のせいだろう〟〝自分には聞こえなかった〟と断言しましたからな」  侍従長の言葉にサーミフは眉間に皺を寄せ、強くグラスを握った。  仮に、本当に割れた音を聞いていなかったとしても、彼はその目でヒバリの部屋にある割れたガラスの破片を見ているのだから、それかもしれないと曖昧であっても侍従長に報告するだろう。だが凪はしなかった。 (何を隠している?)  割れたガラスの正体か。それともヒバリのことか。どちらにせよ、それはサーミフの使用人としてあってはならない所業だ。 「……ヒバリ殿のことに関して何かわかったか?」  こうなっては悠長に構えていられない。ヒバリは何者なのか。凪と関係があるのか。それによっては、ウォルメン閣下すらも疑わなくてはならなくなる。

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