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第134話

「以前お会いされたことで、もう充分なのでは? それに私は許可を出せる立場ではありません。どうしてもと仰るなら、殿下に許可を取ってください」  当たり前のことだが、彼は凪ではなくサーミフの客人なのだ。彼の存在を公にしたくないと考えているのもサーミフであり、凪はそれに従っているにすぎない。  話がそれだけならば長居は無用と踵を返した凪にツバキは口を開いた。 「許可なら取ってあるわ。殿下は、あなたがいれば構わないと。凪もあの方もお忙しいのは理解しているわ。長々と話す気はないの。でもほんの少しだけ、お願い」  サーミフの許可はとってあるとの言葉に、凪は足を止めざるを得なかった。ツバキの息子ではなくサーミフの使用人を貫くのであれば、ツバキの願いを無視することは許されない。  己が頑なに貫いた態度が、逆に己を縛り付ける。 「……承知しました」  苦虫を噛み潰したかのような声だった。しかしツバキはホッとしたように微笑み、大人の会話をハラハラしながら聞いていたナイーマを促す。その様子に、凪は隠すことのできないため息をついた。

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