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第140話

「兎都ではよく飲まれているようです。私がこちらに来てから世に出たものですから、まだまだ兎都以外には馴染みのないものかもしれませんが、薬というほどのものでもないので妊婦や子供も飲んでいるのですよ」  なるほど、薬ではないからこのような見た目の瓶に入っているのかと凪は胸の内で納得した。それにしてもこの血のような赤というのは、その効能を考えると少々悪趣味な気もしないではないが、きっとそれは個人の価値観の違いなのだろう。 「なるほど」  もっと透明感のある水色や白の方が美しい、なんて凪が頭の中で考えていれば、ポツリとヒバリが零した。感情の見えない瞳でジッと真っ赤な小瓶を見つめている。 「兎都の王室が直々にこれをお届けになったということは、きっと有名なものなのでしょう。それを知らぬとは、私の無礼をお許しください」  そっと頭を下げたヒバリに、ツバキは慌てて両手をワタワタと左右に振って否定した。 「い、いえ、そのようなことは決して! それにこれは王室ではなく、一緒に届けられる私の実家からの荷物に入っているものなのです。実家は貴族の位をいただいておりますが、ずいぶんと田舎にありますのでご存知ないのも無理からぬこと。どうぞお気になさらないでください」  実家、という言葉に凪の指がピクリと跳ねる。ツバキの言葉をそのままに受け取るなら、送り主は望月ではなく、ツバキの生家である水無月家だろう。

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