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第146話

「ねぇ、お聞きになりまして?」 「あの噂でしょう? もちろんよ」 「今あの噂を知らない方なんていませんわ」  クスクス、クスクスと笑いながら隠そうともしていない小声で女達が集まり話している。そしてチラと凪に視線を向けたかと思えば、堪えきれぬとばかりにドッと吹き出した。 「まぁでも、人の性格などは変わらぬと言いますし」 「そうよね。うふふ、一度あったことが二度起こらないなんて、誰が保証できますか」 「火のないところに煙はたたぬと言いますし」  そうよね、と笑う彼女達を見て、凪はなんだか嫌な予感を覚えた。  サーミフのお妃候補として集められた彼女達は決して使用人ではない。サーミフが彼女達に少しでも目を向けたり、あるいは正式な妻、夫人となったり、子供がいれば話は別かもしれないが、そのどれでもない彼女達は常に時間を持て余している。爪にヤスリをかけ、マッサージで肌を整え、より美しくなれるようにと衣装の用意や化粧に時間をかけることもあるが、それらすべてを行ったところで一日かかるわけでもなければ、毎日するものでもない。つまりは暇なのだ。そんな彼女たちにとって噂話は最高の娯楽。それがわかっている凪は何が聞こえたところで知らぬ存ぜぬを貫いていたが、彼女達の言葉、そして何より凪を見て一斉に笑ったことが気に掛かった。  もしや、何かよからぬ噂でも流れているのだろうか。  気にはなるが、彼女達に何の話をしているのかと問いかけることはできない。聞いたところでどうせはぐらかされるか更なる娯楽を与えれしまうだけで、凪の求めるものは手に入らないだろう。とはいえ、凪は諜報の真似事など出来はしない。  さて、どうしたものかとため息をついた時、前からルナが歩いてくるのが見えた。

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