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第149話
(まさか、ヒバリ様が?)
あの時の会話を知るのは、あの場にいた人間だけ。凪はもちろん話はしないし、ナイーマはそもそも表面上だけで言葉を深く捉えたりはしていないだろう。ならば残るはヒバリとポリーヌだけ。ポリーヌはウォルメン閣下がヒバリにつけたメイドだ。当然、ヒバリの手足となって動くだろう。
そう、ヒバリ本人が動かなくとも、他が動ける。
(まさか……)
ルナが言ったように、噂にも何にも根拠などない。だが凪は疑われるような発言があったことを知っている。そしてその発言と噂の出現時期があまりに重なっていて、どうしても〝まさか〟という考えが頭から離れない。
「ナギさん? 大丈夫ですか?」
青白い顔をしながら黙って立ち尽くす凪にルナが眉を下げる。心配げに顔を覗き込まれ、凪はようやくぎこちなくも首を横に振った。
「大丈夫……、大丈夫だ。ありがとう、教えてくれて」
努めてゆっくりと呼吸をする。そう、いま取り乱してはいけない。ここは元々安全な場所ではないが、今の凪には魔の巣窟と言って良いだろう。隙を見せたら、途端に足元をすくわれる。そしてその足は、凪だけのものとは限らない。
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