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第151話

 十四歳。それを子供と呼ぶのか、あるいはもう大人と呼ぶのか。  どちらにせよこの世に生を受けてから十四年間、凪はまるで御伽話の住人のような生活をしていた。  そう高くはないが、さりとて低いわけでもない貴族の子息として生まれた時から庶民には得られぬ地位を持ち、財産も十分にあったため衣食住に困るどころか贅沢ができた。掃除も洗濯も料理も、すべて使用人がしてくれる。まだ言葉もおぼつかない時期には母や乳母に抱かれ、あるいは柔らかな揺籠に揺られて眠り、成長すれば綺麗な制服を着て幼稚舎へ向かった。  貴族の子息として学ぶべきものは山ほどあった。自由な時間も他の子供に比べれば少なかっただろう。けれどそれが生まれた時から貴族として恵まれた環境にいる者の勤めだと母に言われて育ってきたから、凪はさほど不満に思うことも窮屈に思うことも理不尽だと怒ることもなかった。  この世の全てには役割がある。物にも、人にも。自分には貴族としての役割を与えられただけ。だから勉学にも励んだし、子供としては退屈なばかりのお茶会や晩餐会にも逆らわず出席した。  お茶会や晩餐会はとても華やかだが、光が強ければ影も濃いとはよく言ったもので、上品な言葉遣いで交わされるのはとても遠回しな嫌味や自慢、そして別の誰かの失敗といった噂話だ。ニコニコ、ニコニコと笑いながら下世話な会話が繰り広げられる。もちろん子供である凪に直接そのような話をする者はいなかったが、耳に入るだけで憂鬱というものだろう。

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