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第154話
彼らのための晩餐会であるのだから当たり前だが、長身の男と黒髪の男はすぐに貴族たちに囲まれた。晩餐会であれほど緊張感を漂わせていたというのに――否、今も彼らの周りにはぎこちないピリピリとしたものが漂っているというのに、貴族の大人たちは笑みを浮かべて自ら彼らの側に向かう。そのチグハグさに違和感を覚えるものの、凪は良くも悪くも貴族という世界をよくよく知っているため、ぼんやりとその人の群れを遠くから見つめていた。
(変なの……)
どれだけ笑顔を浮かべて和やかに話していようと、貴族同士の関係は絵本で見るような友達などではない。彼らは穏やかに話しながら腹の探り合いをしているのだ。それが当たり前であるから、晩餐会のような貴族が一堂に会する場では和気藹々という空気が流れることはない。無いが、それにしても今日は皆が皆、緊張しすぎではないだろうか? 他国からの大切な賓客、それこそ王族を歓待することすら慣れたものであるはずなのに、老いも若きも、王子ですら異常なほどの緊張を滲ませている。相手である長身の男は余裕を滲ませている分、余計に彼らの緊張が目立った。
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