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第155話
さほど喉が渇いているわけではないが特にやる事もないからと、凪は幾度も幾度もコップを傾けては唇を湿らせながらボンヤリと周りを見渡す。どうやら数少ない子供たちは皆、親に連れられて客人を囲む群れに紛れているようで、壁際でボンヤリとしているのは凪だけだった。あまりにも皆が客人を囲むものだから部屋の中央に集中してしまい、凪はポツンと一人だけはぐれたようになっている。しかし用事もないというのにあの中に入るのは嫌だ、と凪は深く考えることもなく、そして独りポツンとしていることを全く気にもせず壁の花を気取った。遠くから、まるで自分は何も関係ありませんとばかりに変な緊張感の漂う群れを眺める。黒髪の男は人々の中に紛れて時折姿が見えなくなるが、長身の男は周りの大人たちよりもうんと背が高いので顔が見やすい。周りがあれこれと話しかけているのだろう、穏やかな笑みを浮かべながら時折頷いている。彼も国賓として迎えられている以上、貴族と同等か、それ以上の立場にあるのだろう。ならば彼の中にも汚さや狡猾さはあるはずだが、それを全く感じない穏やかさだ。このような晩餐会には珍しいそれを凪がジッと見つめていると、ふと群れの中心から視線を感じた。
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