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第157話
広間から漏れ聞こえるゆったりとした音楽を聞きながら、凪は気の向くままに庭を歩いた。大人たちのための晩餐会は子供の凪にとって何をとってもつまらないものであるが、この最高の技術で整えられた美しい庭には興味をひかれた。
図鑑で見た珍しい花、決して強くないほのかで温かい灯り、さわさわと流れる風さえも一枚絵のようだ。
キョロキョロとあちこちに視線を奪われながら一歩、一歩と広間から遠ざかる。もう微かにしか音楽が聞こえなくなるくらい遠くに来た時、凪は主張することなくひっそりとそこにあるベンチを見つけた。木目が美しいそのベンチはひっそりと置かれているとはいえ、一目で高価なものとわかる。しかしそれを全面に押し出すことはせず、まるで自然が生み出したものであるかのように溶け込んだそれは、晩餐会で妙な緊張にさらされた凪の心にホッと安堵にも似たひと息をつかせた。そっとベンチに触れ、導かれるように腰掛ける。星は見えるだろうかと空を見上げた時、カサ、と地を踏む音が聞こえた。
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