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第161話

 記憶を手繰り寄せる凪にクスリとほんの僅かに笑って、彼は真っ直ぐにその瞳を向けた。 「ヒバリ。俺の名はヒバリという。どうぞよろしく」  ほんの微かに頭を下げた彼――ヒバリは姓を名乗らなかった。そういえば、国王も彼の名前だけを言って、姓は紹介していなかったと思い出す。その時、ほんの少し不思議に思い、そして同じように思ったのだろう周りが騒ついたことも。  しかし閣下の隣に立つ以上、凪よりもヒバリの方が格上だ。そんな彼に姓を聞くのは憚られたし、相手にだけ名乗らせたことを今更ながらに気づいて、凪は飛び跳ねんばかりに立ち上がった。 「し、しつれいしました。ボ、ボクは……」 「望月 凪殿だろう? そう焦らなくても大丈夫だよ」  焦りで舌がもつれてしまった凪に、ヒバリは何でも無いように名を口にした。まさか彼は今日集まる貴族、それもこんな子供の名まですべて把握しているというのか?

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