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第163話

「……でも、ヒバリさまもお客さまですよね? へいかとお話しされなかったのですか?」  晩餐会の時、彼は閣下の横、つまりは国王のいるテーブルに着いていた。貴族にも格の上下があるように彼らにもあるだろうが、それでも国王にとって歓待すべき客人であることには変わりない。だがヒバリの言うように国王と閣下が話している時間を使わなければ、街に出る暇などないだろう。ヒバリの話が矛盾していないからこそ理解できない。  何がどうなっているのだ、と幼い頭を必死に働かせる姿が可哀想になったのか、ヒバリは吐息のような苦笑をこぼした。 「客人かと問われれば、正しくは〝違う〟だろうな。国王が呼び、歓待するのは閣下だけだ。閣下は常に俺を伴ってくれるから今回も兎都に来たに過ぎない。つまり国王にとっても、この国の貴族にとっても、大切なのは閣下であって俺個人ではない。だから街を散策したところで閣下に連絡さえしていれば誰も気にはしない」  立場で言えば、己は貴族ではなく閣下の従者のようなものだとヒバリはこともなげに言った。従者がどこへ行こうと気にするのは主人くらいだとも。  彼はそれらを言う時、表情ひとつ変えなかった。その瞳すらわずかも揺らがない。まるで当たり前のことを言っているだけで、それ以外の感情はないかのようだ。けれど、その姿が凪には悲しく見えた。

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