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第169話
「あの……」
注目が集まらぬよう小さな声でヒバリを呼ぶ。その視線が向けられた瞬間、凪はヒバリに努めて笑顔を見せた。
「また、あいに行きます。ぜったいに、また。だから、ボクのこと、おぼえていてくださいますか?」
きっと次は、あなたに〝まんげつ〟をあげよう。辛い思いなんて一瞬で吹き飛ぶくらい、美味しい〝まんげつ〟を。
だから約束。
そんな子供のおままごとに、ヒバリは小さく笑って膝を折る。そして凪の耳元でそっと囁いた。それが嬉しくて嬉しくて、凪はパッと顔を輝かせる。
ではまた、と手を振って、凪とヒバリは別々に会場へ戻った。
視線の先では、まだ貴族に囲まれていた長身の男がヒバリを見つけて手招いている。スッと滑るように近づいたヒバリの腰を、彼は当然のように抱いていた。その側には、約束通り迎えに来た男が控えている。
彼らが何を話しているか、凪にはわからない。だがそんなことはどうでも良いのだ。
〝兎都のお友達を待っている〟
お友達。そうヒバリが言ってくれた。詳細は誰にも知らせてはいけない、いわば秘密のお友達。そんなお友達になんとしてでも〝満月〟をあげなくては。
さてどうするか、とグルグルグルグル、凪は幼い頭を必死に動かして考えた。
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