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第171話

 無事に十個の〝満月〟を手に入れた凪は礼服のポケットに三つ忍ばせた。少々ポケットは膨らんでしまったが、まぁ構わないだろう。  歪に膨らんだポケットに眉根を寄せた母が無言で問いかけるが、それも無視してさっさと車に乗り込む。凪の頭の中にはどうやってヒバリに〝満月〟を渡すか、それしかなかった。  車から降りた凪は、母に手を引かれて城よりは小さいが充分な広さと豪華さを持つ邸宅に足を踏み入れた。凪はこうして晩餐会などに招かれなければ訪れることもない場所であったが、兄はこの邸宅に住む少年と親しいらしく、すぐに出迎えにきた少年と一緒にどこかへ行ってしまった。  同じように招かれた貴族たちと両親がお喋りをしながら広間へと向かう。その隣を凪は必死に歩いた。  ヒバリは来ているだろうか? どうやって渡そう。喜んでくれるかな? そんなことを考えれば考えるほど心が浮き立つ。そして凪は広間に足を踏み入れた。

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