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第173話
(あんなに優しかったのに)
あの日の晩餐会では感じなかった不満がムクムクと凪の中で膨れ上がっていく。心優しいヒバリは、きっとこの異常な空気をすぐさま察知するだろう。彼は横暴なことも何もしていないというのに、入る前から恐れや緊張を向けられる。それはどれほどに苦しいことだろうか。
あまり公の場で喜怒哀楽をそのままに出すのは良く無いことだと両親からも家庭教師からも言われ続けているというのに、今まではそれを忠実に守れていたというのに、気づけば凪は口をへの字にして不満を顔に出していた。俯けばポケットの膨らみが見える。その時、ゆったりと流れていた演奏が止まった。お喋りに興じていた貴族たちが一斉に扉の方へ視線を向ける。カチャリと開かれた扉の向こうには、この屋敷の主人とその妻、国賓の閣下、そしてヒバリが立っていた。
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