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第174話
挨拶をにこやかに受ける閣下の後ろで、ただ静かにヒバリは立っている。今日はあの時迎えにきた男は一緒にいないようだ。
皆が見守る中、主催の貴族は閣下に恭しく着席を促した。しかし閣下は柔らかな笑みを浮かべた後、隣に立つヒバリの方へと視線を向けた。そしてヒバリの椅子を引こうと準備している使用人の男をそっと退け、閣下自らが椅子を引いてヒバリを座らせる。その光景に貴族たちは思わずどよめいた。
先日ヒバリが自分で言ったように、位で考えるならば貴族である閣下が上位で従者であるヒバリが下位だ。晩餐会に参加できる人間が果たして本当にただの従者なのかという疑問は残るが、この場において閣下よりも位の高い者がいないのは確かだろう。それなのに、位の高い者から着席するというマナーを破ってまで、閣下はヒバリを自らの手で着席させた。これはどんな意味があるのか、ヒバリはいったい何者なのか、次から次へと湧き出る疑問に貴族たちの騒めきは止まらない。だがそんなこと気にもしないとばかりに閣下はヒバリを座らせると、その隣である自らの席にさっさと座った。
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