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第175話

 騒めきに満ちているものの、晩餐会は予定通りに進められていく。国賓をもてなすのだからと凝りに凝った食事はどれも美しく美味しいというのに、凪はソワソワと落ち着きなく、食事を楽しむ余裕もなかった。  どうやってヒバリに〝満月〟を渡そうか。あの時みたいにヒバリが一人で散歩に出てくれれば、あるいは凪が庭に出るのを見ていて追いかけてくれたらと思うが、そのどれもに確証など存在しない。けれど、きっと今日が最後のチャンスだ。今夜を逃せば、きっとヒバリが国に帰るまでに会うことはできないだろう。  どうしよう、どうしようと頭を悩ませる凪に、クスリと頭上から小さな笑い声が聞こえた。見上げれば、いつの間にか貴族の夫人とお喋りしていた母が凪の方を見つめている。そしてそっと顔を近づけた。 「何かヒバリ様に用があるの?」  手で口元を隠しながら囁かれたそれにハッと凪は目を見開く。そんなわかりやすい反応を見せた息子に、母はクスクスと楽しそうに笑った。

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