192 / 198

第192話

「夜遅くにすまないね」  まったくすまないと思っていなさそうな微笑みを浮かべながら入ってきたウォルメン閣下に、サーミフはゆっくりと首を横に振ってソファに促した。閣下をここまで案内してきた侍従長が音もなく扉を閉めれば、サーミフと侍従長、そして閣下だけの空間が出来上がる。 「先程こちらに到着したんだ。今夜はどこかのホテルに泊まって、明日の朝にでも来ようかと思ったんだが、明るい時間は人の目が多いからね。別に私が悪いことをしているわけじゃないから気にはしないのだけど、それをするとヒバリの仕事に支障がでそうだったから無理を通させてもらったよ」  優雅に足を組んだ閣下にサーミフは苦笑する。急にポリーヌが訪ねてきて何事かと思えば、侍従長を裏門によこしてほしいと要求してくるとは。 「いえ、こちらとしても人目を避けていただくのはありがたいことですからお気になさらず」  まったく気にしていないであろう相手に〝気にするな〟というもの茶番じみているが、こんなことは日常茶飯事だ。時には茶番とわかっていてもやらなければならない時がある。

ともだちにシェアしよう!