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第193話
「ではお言葉に甘えて本題に入ろうか。私も少し急いでいてね」
侍従長が用意したティーカップを手に取り、瞼を閉じて香りを楽しむその姿に急いでいる様子など、どこにもない。相変わらず真意がわからない方だと内心で息を吐きながらサーミフは頷くことで先を促した。
「君が依頼した贋金の件だが、こちらの方でも少しだけ流れてきていたようだから私の権限で取り押さえさせてもらったよ。だがセランネには贋金を作る工場などはなかった。……だが、こんな報告など君には必要ないと私は思っているのだけど、違うかな?」
式典出席のためディーディアに来る前、あの贋金を見つけた瞬間からウォルメン閣下は自らの配下を総動員してセランネをしらみつぶしに捜索した。ほんの僅かな紙片さえ見落とさぬよう慎重を期して。それでも本物と混じった偽の紙幣はあるものの、大元となる制作場所はみつからなかった。しかしそれは、念の為に調査を命じたウォルメン閣下も最初からわかっていたことだった。そう、偽の紙幣を見ただけでわかるものなのだ。
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