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第194話

「こんな稚雑な策がよくぞここまで保ったものだと素直に感心するよ。いや、策というのもおこがましい気がするね。何もかもが行き当たりばったりで、慎重さの欠片もない。印刷技術だって巧妙なものではないからね。おそらくどこにでもあるような印刷機で印刷したのだろう。普段から気にする必要のない一般市民は騙せたとしても、注意深く見る者の目は、それが例え素人の目だとしても騙せない。その程度でしかないのだから」  その程度のことに、サーミフが遅れをとるとは思えない。彼は知っていたはずだ。少なくともウォルメン閣下が贋金を渡した時には全容がつかめていたはず。例え何らかの事情で逮捕が遅れていたとしても、わざわざヒバリを留める必要はなかっただろう。 「だが、君はそんな稚雑さしか持っていない者達のためにヒバリの手を借りたいと言った。私はあの子がやると言ったことに対してよほどでない限り否は言わない。だがね、何も知らなくて良いと思えるほど放任主義でもないんだ」  コクリと紅茶を飲んだウォルメン閣下がカップをテーブルに置く。カチャ、と鳴る音はほんの微かなものであるはずなのに、サーミフの耳にはひどく響いた。 「教えてくれないか? 君はヒバリを留めることで何が知りたかったのだろう。何を疑い、何を明らかにしたかったのか」

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