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第197話
単純で、稚雑な、すぐに解決するただの犯罪であるはずだった。贋金を作るのは大罪だが、お金がないから印刷機でコピーしようというような、罪の重さに対してはあまりに軽いもの。尋問をするまで、誰もがそう思っていた。
「調べれば調べるほど矛盾が生じました。真相を解明するために、あらゆるものを調べ、そして疑った。――ナギはもちろん、ヒバリ殿も兎都の方でしょう。ヒバリ殿を疑えば閣下がお怒りになるのはわかっていましたが、背に腹は変えられませんでした」
お許しください、と頭を下げるサーミフに閣下はクスリと笑った。
「ヒバリを――ナギ殿を疑ったのは、それだけではないだろう? ヒバリと会ったことがあり、ナギ殿が大切にする存在が深く関わっているはずだ。まぁ、君にも立場というものがあるだろうからね、これ以上の発言を強要することは控えておこうか」
ウォルメン閣下がセランネの公爵であるように、ここに座るサーミフはディーディアの王子。言えぬことの方が多い。
「ただひとつ君の誤解を解いておこうか。ヒバリはあのような見た目をしているが、兎都と関わりのある子ではないよ。兎都の知り合いも、ツバキ夫人とナギ殿しかいない」
多くの者はヒバリと深く関わろうとしない。ヒバリがいる時は必ずと言って良いほどウォルメン閣下がいるからだ。人とは正直なものだと、ウォルメン閣下は常々思う。だからこそ、あの日のことはよく覚えているのだ。
なんの下心もなかっただろう、幼子がヒバリに向けた眼差しを。
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