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第199話
どうぞ、と促す閣下に、サーミフは疑いの眼差しを小瓶に向ける。
「これは?」
透明なガラス瓶に入れられたそれはなんの色も纏っていない。見たところサラサラとしてとろみもなく、まるでただの水を小瓶に入れたかのようだ。
「そう警戒しなくても害のあるものではないよ。匂いを嗅ごうが、飲み込もうが、なんら人体に影響はない。ただの水のようなもの。私と君にとってはね」
含みのある言い方にサーミフは眉間に皺を寄せる。テーブルに置かれた小瓶に手を伸ばし、視線の高さまで持ち上げた。そっと小さく揺らしてみるが、やはり水のようにしか見えず泡もたたない。
「私と閣下には影響が無いとおっしゃいましたが、では誰に影響があるのでしょう」
まさかディーディア国王たる父か、と小瓶を握る手に力が入る。しかしそれをわかっているはずの閣下はいっそ能天気なほどにゆったりと首を横に振った。
「君の考えているようなものではないよ。これは多くの者にとって無害だ。けれど兎都の者には飲ませてはいけない。毒だからね」
対兎都専用の毒だ、と閣下は断言する。は、とサーミフの唇から思わず声が溢れた。
多くの者にとって無害な、兎都専用の毒?
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