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第201話
「これは、いったい何なのです?」
数千年前という途方も無い数字を耳にしてサーミフは些か混乱する。この手の中にある得体の知れないものは何なのか。
「本来の名前は誰も知らないが、それは通称〝マレツァリ〟と呼ばれるものだ。こちらの文献では〝天使の救い〟とも〝神の祝福〟とも、ただの〝忘却〟とも書かれているがね」
なにせ古いものだ。それも本当の名前を誰も知らないのだから皆が思い思いに呼び名をつける。おそらくは閣下が口にしたもの以外にも名はあるだろう。
「マレツァリという言葉も昔の兎都のものでね。昔の、と簡単に言ったが、その途方もない年月は人の文化も言語も環境も、何もかもを変えてしまう。おかげで学者たちが懸命に研究をしているがわからないことも多い。つまりそこに書かれていたものがマレツァリだということ、それは本来の名ではないということはわかるけれど、マレツァリという言葉が何を示すものなのかはわからない。ま、何が言いたいのかというと、今君が持っている物は神話と呼んでも差し支えないほど昔に存在したものだ、ということだ。君が望むのなら詳細を話してあげよう。ただし、君がその毒を信じなかったように、この話は本当に御伽話のようなものだ。現代の者たちはなかなか信じることはできないだろう。それでも聞くかい?」
きっと君は信じない。そう確信しているような口ぶりだった。
※実際にある商品名と被っていたので「天使の救い」に名前を変更いたしました。
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