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第207話
「特別なものを持つというのは、幸せなことばかりではない。彼らもまたそうだったのではないかと、私は考えている」
それは単なる閣下の妄想ではない。
「確かに、これは神話と呼ばれるほど昔の話だ。風に晒され、雨に打たれ、あるいは災害によって失われるものも多い。昔であればあるほど文献が消えていくのも道理だろう。だがね、それを踏まえても兎都の者が自らの手で残したものは少なすぎる。私が今話した大半は兎都以外の国から発見されたもので、書かれた言語も兎都のものではない。兎都で発見されたもの、そうではないもの、あらゆる文献を見て私は彼らが記録を残さなかったのではなく〝残せなかった〟のではないかと推測した。彼らは感情ひとつでさえ、簡単に出すことはできなかったのでは、とね」
なにせ記録というものは〝記憶〟によってその姿を成すのだから。
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