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第208話
「例えば……、そうだな。例えば、私が何か特殊な力を有しているとしよう。そしてその力を使って君のその腕輪を消したとする。するとその腕輪はこの世から消滅するだろう? だが私が消すのではなく奪ったとすれば、腕輪は君の手元から無くなったというだけで存在は消滅せず、私が所有することになる。それと同じことを私は仮説とした」
夜は始まったばかりであるというのに、もたらされた情報は膨大で御伽話と笑い飛ばしたくなるものばかりだ。そして何より、まだ本題に入ってすらいない。
コツ、コツ、と二人の耳に足音が響く。
「〝彼らの手を握っている間だけ人々は懐かしき人と会い、そして苦しき記憶は永遠に奪い去られた〟とある。忘れてしまったものを思い出すには力が必要だが、その力の全てを与えることはできない。だから彼らは触れている間だけその力を只人の身体に流し込み、記憶を蘇らせたのではないかと考えている。そう考えれば蘇った記憶が永遠ではないということに説明がつくからね。しかし苦しい記憶は永遠に奪った。消し去ったのではなく、奪ったんだ」
「先程の腕輪のように、消滅したわけでは無い、と仰りたいのですね?」
サーミフの問いかけにその通りだと閣下は頷く。
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