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第218話
「ここがどこだか俺にもわからない。わからないけど、きっと来てくれると思う」
多分、と呟くその姿はひどく寂しげで頼りなく見える。まるで迷子の子供のようだと思うが、もしかしたら彼も不測の事態に取り繕うだけの余裕がなくなっているのかもしれない。
「背負ってあげられたら、もっと早くに脱出できたのかもしれないけれど、ごめんね」
そう言って儚く笑うヒバリに、凪は何を言うこともできなかった。
凪とヒバリの体格はあまり変わらない。その上、彼はいつも口癖のように誰かを守るだけの力は持たないと言っていた。服の上からでもわかるほどヒバリは細く薄い身体をしていて、きっとこれでは凪を背負うことはできたとしても、一歩もそこから動くことはできなかっただろう。なにより、彼に凪を守り救う義理はない。むしろヒバリを危険に晒したとして、凪が処断される立場だ。それでも彼は凪を母親の元へ帰すと言い、目を覚ますのを見捨てず待っていてくれた。それがわかっていて、何を言えるというのだろうか。
「……少し、ここに横たわって寝ているふりをしていてください。何があっても、決して目を開けないで。寝たふりを続けて。きっと大丈夫だから」
耳をすましていたのだろうか、何かに気づいたヒバリが凪に横たわるよう促す。早口でそう言って、その手で凪の視界を塞いだ。もう一度、絶対に寝たふりを続けてと繰り返す。
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