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第221話

 耐えろ、耐えろ、と己に言い聞かせる凪の耳にそんな言葉が聞こえる。ハッと、思わず目を開いた。  ヒバリだけなら、帰そうと言うのか? (もしも、そうなら……)  もう、良いかな。  ポツン、とそんなふうに思った。身体から力が抜けていって、演技でもなんでもなく瞼が閉じる。なんだかとても心地が良い。  ここでヒバリに何かあれば国際問題にまで発展してしまうかもしれないが、彼が無事に帰れるのであれば、凪が生きようが死のうがなんら問題は起こらないだろう。母は国王の妻の一人だが、凪は国王の血など引いていないし、立場は一介の使用人にすぎない。もしかしたら母はほんの少し悲しんでくれるかもしれないが、時が傷を癒すだろうし、側にはナイーマもいるのだ。いずれ凪を思い出さない時間の方が多くなるだろう。  だって、何が起ころうと明日は来るのだ。明日が来て、明後日が来て、時は流れていく。どんなに争ったって、死でもってさえも止められるのは己の時間だけ。  己が止まっても、他者は止まらない。世界は止まらない。  明日が来る。明後日が来る。  それを凪は知っている。 (だから――)  そんなふうに思った時、ドサッ、と何かが落ちる音がした。同じようにもう一度、何かが落ちる音がする。突然のことに落ちかけていた意識が戻った凪の耳に、小さなため息が聞こえた。

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