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第228話

「……仕方ない。声が聞こえない扉を開けていきましょうか。残念ながら、気配を探るのは得意じゃないから」  苦笑するヒバリは片足を上げて靴底を開ける。そしてまた小瓶を取り出し、靴を元に戻すと歩き出した。時折トントン、と小瓶を持った手がヒバリの首元を叩く。無意識にしていたのだろう、そこに触れるたびにヒバリは悲しそうな顔をした。〝セオ〟〝セオ〟とうわ言のように呟いている。凪はウォルメンという名しか知らないが、おそらくセオというのは閣下の名前なのだろう。 「ここ……は、ダメか……」  セオ、と呼びながらも動きを止めることのないヒバリは扉のひとつひとつに耳を近づけながら中の様子を窺い、少しでも声が聞こえるとその場を離れた。なんとも地道な作業は視界に映る扉の数を考えるだけで気が遠くなりそうであるが、今はそれしか方法がない。  人がいる扉を避け、音のしない扉を鍵を使ってそっと開けては肩を落とすを幾度か繰り返す。もう扉も両手で数える程度になった時、中をそっと覗いていたヒバリの肩がピクリと小さく跳ねた。どうしたのだろうかと凪も中を見ようとするが、ヒバリはそれを遮るように扉を閉めようとする。その瞳は可哀想なほどに彷徨っていて、唇はわずかに震えていた。それでも彼は何かを振り切ろうとするかのように音を立てぬよう扉を閉める。その時だった。 「まって……」

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