237 / 240
第237話
元々ヒバリは贋金の調査をしていたはずだ。自分はそれに監視の意味合いも込めて付いていたにすぎない。贋金、そう、問題は贋金だったはずで、銃や弾薬などでは決してなかったはずだ。なのに目の前に広がるのは武器が大量に積み上げられた部屋で、一歩ここから出れば何が起こっているのかわからないが悲鳴があちこちから聞こえる。
それに、あの思考を喰わんとする霧は――、
「考えない方が良い」
いったい何なのか、沈み込もうとしていた思考を、ヒバリの声が引き留めた。それは強くしなやかで、沈み込む凪を引っ張り上げようとしてくる。
「考えれば考えるほど、その記憶は消えていく。だから深く考えない方が良い。幸いにも部屋に充満していたのは霧だ。原液を直接流し込まれた訳じゃない。だから今は、何も考えず外に出ることだけに集中した方が良い。考えるのは、綺麗な空気の中でだ」
ここでは何も考えるな。そう言ってヒバリは凪に子供を預けると奥にあった銀色のケースを慣れた手つきで開けた。それは箱に入れられ積み上げられたものとは明らかに違う、いかにも高級そうなケースに入れられた拳銃。それを手に取るとヒバリはケースを閉めた。凪の元へ戻り、その拳銃を差し出す。
ともだちにシェアしよう!

