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第238話

「これもさほど良いものではないけど、それでもこの中では最上に位置するだろう。よほどの扱いをしなければ暴発はしないはず。何があるかわからないから、護身用に持っていてください。何かあっても俺が対処するけど、もしも俺が死ぬなりしてどうしようもなくなって、戦力にならなくて、もう逃げ切れないってなったら、迷わず撃って逃げて」  人を撃つ。その言葉に凪は呆然とした。力を維持できず、抱えていた子供を床に下ろす。子供は意味をあまり理解していないのだろう、興味深そうに拳銃を見上げていた。 「ぼ、ぼく、は……」  兎都もディーディアも、銃の所持は認められている。お金持ちの子供なんかは護身のためにそれこそ物心ついた時から銃に触れ、そして撃つ練習もしていた。凪もまた、兎都にいたころは護身として持っていた。練習で撃ったことも数え切れないほどある。けれど、その時撃ったのはただの的だ。人を模した木偶ですらない。 「でき……ない……」  人など、撃てない……。 「……なら、撃たなくて良い」  できない、と震える凪にヒバリはあっさりと頷いた。そして慣れた手つきで銃弾を外していく。 「これで、撃っても人は殺せない。弾がないからな。撃ちたくないなら、撃つ必要はない。それはきっと、真っ当な心なのだから。でも、これは持っていて。俺たちが口に出さなければ、これに銃弾が入っていないことは誰にもわからない。なら脅しくらいには使えるだろう。それに、これを持ち帰れば証拠になる」  ここで違法なことが行われていたという証拠。それを持ち帰れと、ヒバリは凪に拳銃を持たせた。

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