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第241話
〝あなたに――出会わなければ良かった〟
そう聞こえた次の瞬間、サーミフの耳に何とも言えぬ鈍くて重い雑音が鳴り響いた。凪の服にコッソリと仕込んでいた盗聴器が何らかの衝撃で破壊されたのだろう。もはやノイズがうるさく響くばかりで実のあるものは何も聞こえない。
技術の限りを尽くして作られた超小型の盗聴器であるが、それでも万能ではない。何かの弾みで服から落ちてしまったという可能性もあるが、それにしては衝撃音が凄まじく、なによりたった一度の衝撃で壊れてしまったことが気に掛かる。落ちることも想定して作られた盗聴器は、ただ地面にぶつかった程度であれば多少聞き取りにくくなるかもしれないが問題なく本来の役目を果たせるはずだ。なのにたった一度で?
耳につけた小型の受信機に集中しつつ、サーミフはウォルメン閣下の背中を追い続ける。彼はすぐに合流した執事と何か難しい顔をしながら話しており、時折耳に手を当てていた。
そういえば、とサーミフは先程の光景を思い出して二度瞬きをする。あの時、凪につけた盗聴器の内容を聞いていたのは、当たり前のことであるがサーミフ一人だけだ。ウォルメン閣下には何も話していない。なのに閣下はサーミフよりも早く動いた。それが示す答えはひとつ。
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