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第245話

 見せた方が早い、と閣下はサーミフに端末の画面を差し出す。駆け寄ってきた小隊長と共に画面を覗き込み、揃って先程の閣下と同じように眉根を寄せた。  画面には建物の一つ一つまで詳細に載っている地図が映されている。しかし、ここにいると示す赤い点滅がある場所に建物はない。空き地と同じく空白が広がるばかりだ。 「建物が無い、か……。警戒して車を乗り捨てたか、あるいは――」  権力のある誰かがわざとに建物が無いよう地図を作成したか。  どちらの可能性も否定できないが、確認しなくては何も始まらない。時間は惜しいが、今は可能性をひとつひとつ潰していくことが最短の道だろう。 「閣下、我々はここに向かいます。もし閣下も向かわれるようでしたら私と一緒に防弾の車へ」  本来であれば、ウォルメン閣下を渦中に連れていくことは得策ではない。ヒバリはともかく、ウォルメン閣下は高位の人間だ。彼に何かあればセランネとの関係も悪くなるし、各国の犯罪もまた増えることだろう。彼が深淵の王であることを知るならば、ディーディアの王子としては危険を避けるべきである。だが、そんなことを幾万の言葉を用いて訴えたとしても、ヒバリが関わっている以上ウォルメン閣下はジッと大人しく待っていてなどくれないだろう。待つどころか、今だって先陣きって救出に向かわんとしている。ならばできるだけ安全を確保した上で連れて行った方が得策だ。何より、サーミフはあまり情報を持っていない。閣下の持つ情報に縋る心がないとは、言えないのだ。

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