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第253話
「ま、こちらのことなど君にはどうでも良いことだろう? この件にヒバリが何も関わっていなければ、君はヒバリになど用は無いはずだ。君が気に掛けるべきは――違うな、気に掛けたいと思うのは、ヒバリでは無いはず」
それは同情か、それとも哀れみか。あるいは、贖罪であるのか。
「……気に掛けたいと思う者などおりませんが」
「おや、無意識かい? それも結構だけどね。ここまで君の質問に答えたんだ。私からの質問にも答えてもらおうか」
なに、国家機密などは聞かないよ、と彼は笑う。
「昔、ヒバリに問いかけられたことがある。咲き誇る盛りの花を愛でる者は多くいるが、散って地面に落ち、雨に打たれ人に踏まれた花弁を愛でる者はいるのか、と」
そっと、閣下の指が銀の首輪を撫でる。
「君は、それに何と答える?」
静かに落とされる、その問い。脳裏に浮かぶのは泥でグチャグチャに汚れてしまった、見るも無惨な花弁。それを一瞬でも愛でる者はいるのか。最愛とまで言ったヒバリにそう問いかけられた閣下は、いったい何と答えたのだろう。サーミフが口を開きかけた時、車が静かに止まった。
「殿下、着きました。どうやら廃工場のようです」
運転していた兵が静かに告げる。確かに、そこには廃墟のように見える大きな工場の建物があった。
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