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第254話

 人の気配を感じては隠れ、あるいはヒバリの持つ薬で昏倒させ、そしてどこにあるかもわからない出口を探す。言葉にすればたったそれだけのことだが、この建物は彼らにとっては都合よく、そして凪達にとっては最悪と言って良いほどに広くて、階段を探すだけでも随分と時間がかかってしまった。おそらく凪がヒバリと寝かされていた部屋は地下二階だったのだろう。ようやく窓を幾つか発見できたが、残念なことに頑丈な鉄の柵が付けられていた。柵の隙間は腕一本すら通らないほど狭く、工具も何も持ち合わせていない身としてはどうすることもできない。 「困ったな……」  小さく呟いたヒバリに凪と子供が視線を向ける。しかしその視線に気づく余裕もなくなったのか、ヒバリは俯いたように己の掌を見つめ深いため息をついた。正確に言えば、その手に持つ小さな小瓶を見つめて。 「もう、無いのですか?」  幾度か見れば流石の凪にも小瓶の中身が即効性の睡眠薬か何かであることは理解できる。それを口移しで含ませているヒバリが全く眠らないのには謎だが、今はそれどころではない。

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