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第257話

「俺が行くから、凪殿はその子と一緒に扉の影に隠れていてくれ。そうだな……、ゆっくりと四十秒くらい数えてから、静かに出てきてほしい。俺が注意をひいておくから、一目散に玄関に向かって走って。俺は後からどうにかするから、二人はとりあえず外に出て誰かに助けを求めるんだ。さっき窓からチラッと見たけど、人の目を恐れてか外に見張りは立っていないようだから、玄関さえ突破できれば、走って逃げ切ることもできると思う」  子供を抱えながら逃げるということを考えれば、ヒバリの言葉は少々楽観的なように思えた。だが、ならば別の方法を思いつくのかと問われても凪の頭には何一つ良案は浮かんでこない。このままここでジッとしていても誰かが来て捕まってしまうだけ。ならば一縷の望みをかけてヒバリに従う方が良い。  ギュッと子供を抱きしめながら頷いた凪にヒバリは笑ったのだろう、その口端が小さく動いた。  ヒバリに促され、扉の影になるところに身を隠す。カチャリと扉が開く音がして、凪はバクバクと鳴り響く心臓を宥めるように瞼を閉じた。  いーち。  にーい。  さー……。

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