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第259話
「まぁ、ここの建物も崩れてないのが不思議なくらいボロっちいからなぁ。外付けの鍵も中の奴らはすぐにかけ忘れちまうし」
ま、玄関に俺らがいるからなんだろうけどな、と男達はゲラゲラと笑った。酒の臭いはしないが、どこか酔っ払っているかのような陽気さを感じる。
「それにしても、勿体ねえなぁ。こんな別嬪さんは珍しいってのに、結局俺らはお零れにも与れず指咥えて見てるだけなんてよ」
こんな綺麗な肌は見たことがない。なのに、撫でるくらいしかできないなんて。
ブツブツと文句を言いながら、飽きることなく男はヒバリの頬や首筋を撫でる。くすぐったそうにしながらも笑うヒバリに魅せられたのか、他の男達も間近に寄ってきた。
「でもまぁ、仕方ねえか。娼館に行けば、あんたには劣るだろうが良い女はいるだろうからな。たっぷり金を貰ったらそっちに行くとするかね」
色も良いが、世の中ってのは金なのさと男が言う。まるですでにその身が億万長者にでもなったかのようにそうだそうだ、と男達も囃し立てて笑った。
「わたしのことはキライ?」
三十五。
三十六……。
「いいや? 俺が見た中で一番の別嬪さんだよ」
男が戯れにヒバリの顎を撫でる。くすぐったいと身を捩りながら、ヒバリはナイフを持つ男の腕を握った。
「なら、わたしだけを見て」
その瞳で、私だけを。
一等艶めかしく、誘うように笑う。
笑う。
コチ、コチ、と耳の奥で針が動いた。
三十八。
三十九……。
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