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第261話

 夜はその静寂ゆえに音には気をつけなければならないが、その闇ゆえに姿を隠すにはうってつけの時間とも言える。隠すように停めた車から降りたサーミフは、すぐに兵達に周りを偵察するよう命じた。  中からの明かりが漏れているおかげで、窓付近の様子はよく見ることができる。どうやらそれなりの警戒心はあったのか、一階と二階の窓にはすべて鉄の柵が取り付けられているようだった。 「三階の窓には柵など無いようだが、侵入できそうか?」  これだけ廃墟のようになっていれば鍵は機能していない可能性があるが、それを期待して玄関扉のみで制圧するのは少々無謀だろう。こちらはすでに戦うことのできない人質を取られているようなものなのだから、念には念を入れて然るべき。同じように考える兵達は素早く配下に目配せをし、サーミフに頷いた。 「幸い、この建物は元々工場だったようですから避難経路などを使えば三階への侵入も可能でしょう。これだけ古いと足場が崩れぬよう慎重にならざるを得ないため通常よりは時間がかかるかもしれませんが、慣れている兵を向かわせますのでご安心を」  ここに向かうまでの時間で既にこの廃工場の見取り図も入手できたと言う兵士にサーミフは小さく息をつく。少々遊び心のある特殊な作りにはなっているようだが、見取り図があれば何も問題はない。 「サーミフ、少し良いかな?」  では兵を向かわせようとした時、後ろで何かをしていたウォルメン閣下から声をかけられる。振り向けば扉が開いたままになっている車にもたれた閣下が手招きをしていた。不思議に思いつつも近づけば、車の中を覗き込むように促される。素直に従えば、モニターの光量を絞りに絞って座面に隠れるようにしながら何かをしているティゼットの姿があった。

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