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第263話

「で、殿下。恐れながら、これより先は危険です。殿下と閣下はここにお留まりいただいた方が……」  己の役目だと、なんとか声を振り絞って小隊長が言う。今でこそ拳銃片手に乗り込もうとしているサーミフであるが、元々は冷静にしてある意味冷淡な人だ。王族である自分が乗り込む必要もなければ、乗り込んだ後で起こり得るかもしれない危険を考えられないような浅慮の持ち主ではないし、客観的に見て何を守り何を切り捨てるべきかを判断できる人間でもある。今は閣下の勢いに感化されているのかもしれないが、声をかけることで冷静になれるだろうと小隊長は思っていた。思っていたからこそ最後は言葉が途切れてしまうほどに小さくなってしまったが、必要なことは勇気を振り絞って言ったのだ。  だというのに、目の前の光景が全く変わらないとはどういうことだろう。 「あぁ、すまないねディーディアの小隊長殿。こちらは自分達でなんとかするから、君達はサーミフを守ることに集中してくれて構わないよ」  サーミフが何かを言う前に、閣下がにこやかに笑う。場違いな上に絶望を叩き込まんとするその笑みに小隊長は自分の上司たる隊長の名を叫ぶように呼んだ。残念ながら別の任務に出ている隊長はもちろん、小隊長より上の者達はこの場にいないので助けは来ないが。  そんな絶望を抱いている小隊長に構わず、閣下はサーミフに視線を向ける。 「そこの彼には申し訳ないことをするが、どうしても譲れないものが私にもあってね」  優しい声音はどこか寂しげだ。まるでその手に車に置いているはずの首輪が見えたような気さえする。

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