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第267話

 考えたのは一瞬だった。迷っている猶予など無かった。凪は強く子供を抱きしめると体当たりするように扉を開いた。バンッと大きな音が鳴り響いて、ヒバリの周りを囲っていた男達が一斉に振り返る。 「待てッ!」  後ろから声が追いかけてくる。だが振り返っている余裕もない。走りながら辺りに視線をめぐらし、外に繋がるだろう扉を探した。広々としたそこは、しかしテーブルなどが雑多に置いてあるだけで視界を遮る物はない。すぐに扉は見つかり、凪は一目散にそこへ向かった。 「待てって言ってるだろうがッ!」  怒鳴るその声は誰のものか、もうわからない。ヒバリを囲んでいた男達もワタワタしながら拳銃を手に取った。早く、はやく逃げなければ。  走って、走って、走って。扉に手が届く瞬間、影がさし、そして銃声が鳴り響いた。 「ッッッ――!!」  熱い何かが足を奪った。グラリと傾く自分の身体がやけに遠く感じる。子供を抱いたまま地に倒れ伏した時、ポタリ、ポタリとその手を生暖かい何かが濡らした。

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