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第273話
(少なくとも凪とヒバリ殿は血を流している。今の内に医療車の準備を……いや、凪とヒバリ殿に関しては私の車に乗せて病院に運んだ方が早いか)
幸いにして今はまだ人々が眠っている時間だ。車には取り外しのできるサイレンも用意してあるが、車が多くなる時間帯までかかってしまえば、病院に着くまでに死者が出るだろう。それにチラと見た監視カメラの映像には、横たわっている人影が幾人かいた。外傷は無いように見えたが、念の為全員を病院に運ぶ必要があるだろう。
〈血が見えないから、勘違いをするんだ。自分達のしていることは軽いって〉
声が聞こえる。そこから思考を切り離すようにサーミフは努めて冷静に何をすべきかを考えた。
カチャ、と音がなる。
ふたつめ。
(これだけ古ければ崩れてできた抜け道も山程あるだろうな。やはり増援を呼んで、それから、後は……)
あれも、これも、とサーミフは頭の中で予定をたて、必要なものは無線機で手配を命令する。いかに無駄がなく動けるか、それに集中していた時、その声は響いた。
〈目に見える赤だけが血ではない。刺し、撃つばかりが殺しでもない〉
ドクン、と何故か心臓が大きく動いた。ほんの僅か、瞳が彷徨う。しかしカチャ、と聞こえた音にサーミフは慌てて思考を切り替えた。
今は何かを考えている時ではない。そんな余裕など何処にもない。下手をすれば中にいる無力な人間も、ここにいる兵の命も失いかねないのだ。
静かに、ゆっくりと息を吐く。その時、兵が無言で片手を上げた。鍵がすべて解除できた合図だ。
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