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第275話
「ナギ、ナギ」
名を呼び、頬に軽く触れるが、凪が目を覚ます気配はない。息はあるようだから、今は気絶していた方が痛みを感じなくて良いだろうかと思い直し、サーミフは後ろを振り返って女性兵士を呼んだ。すぐに駆けつけた兵に凪が抱いていた子供を渡す。
「後は任せるが、とりあえずこの子も病院に」
端的な命令に深く頷いた兵士が強く子供を抱きしめる。その時、子供の喉がヒクリと動いた。
「ぅあ……、あああああああああああああああああああッッッ!」
先程まで震えてこそいたものの人形かと思うほど静かに口をつぐんでいた子供が、兵士の胸元にしがみついて大声を上げながら泣きじゃくり始めた。泣き声に混じり、ママ、ママ、と母親を呼んでいる。
「すぐにママを探してあげるよ。もう大丈夫だよ。ママの元へ帰ろうね」
大丈夫、大丈夫と囁かれるそれに頷きながら、わんわんと泣く子供を見つめる。グニャリと心臓が蠢いた。
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