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第282話
「すぐに医者を呼ぶから、あまり動かないように。いいな?」
諭すように言うサーミフの声音がいつもと違って、凪は熱さで潤んだ瞳を彼に向けた。侍従長に指示を出すその姿はいつも通りのはずであるのに、凪の目にはどこか無理矢理感情を押さえ込んで繕っているように見えた。
焦りか、
苦悩か、
それとも諦念か。
凪にそれらを見分ける術などない。だがもしや、と思い出したことがある。その瞬間、ゾクリと冷たい何かが背筋をつたった。
「でん、か……」
掠れた声で、答えを持つであろうサーミフを呼ぶ。しかしサーミフが振り返った瞬間にノックの音が響き、医者が姿を現した。サーミフと侍従長だけならばともかく、関係のない者がいる場所でその名を口にするのは憚られる。凪はバクバクとうるさく鳴り響く心臓をできる限り抑え込み、痛むかなどの質問を幾つかする医者に震える唇で答えた。
「痛みは出ているでしょうが、幸い動かれた衝撃でまた出血したなどは無いようです」
大丈夫、と医者は言って足を見るために捲っていた掛布を元に戻すと凪に視線を向けてきた。顔色をジッと見てひとつ頷き、点滴に手を伸ばす。
「危機は脱しています。ですが足だからといって油断して動き回ったりしてはいけません。これから先も自分の足で歩きたいと思われるのでしたら、しばらくは絶対安静でお願いします。点滴を交換していきますから、また何かあれば検診時間以外でもお呼びください」
ニコリと笑うどころか、まったくの無表情で脅しをかけてきた医者はテキパキと点滴を交換すると一礼して部屋を出て行った。滞在時間の短さといい、その動きといい、おそらくは無駄という無駄を省く性格なのだろう。しかしそれが今の凪にはありがたかった。
「あの、殿下……」
パタリと扉が閉じてすぐ、凪はサーミフに視線を向けた。それを受けた彼は視線を返し、ゆっくりと凪と向かい合うようにしてベッドに腰掛ける。ベッドがほんの僅かに揺れた瞬間、凪は震える唇を開いた。
「でんか……、ヒバリ様は? ヒバリさまは、ご無事ですか?」
昨日はWi-Fiが繋がらず、更新できなくて申し訳ございませんでした(汗)
昨日の分と今日の分を1ページにまとめて更新させていただきました!
よろしくお願いいたします
十時(如月皐)
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