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第284話
常識では考えられないそれに頭の中がグルグルと渦巻く。それを察したのだろう、サーミフがポンポンと掛布の上から肩を叩いた。もっとも、凪の身体を案じてか、それは羽が触れるように軽く、まったくと言って良いほど振動を感じさせないものであったが。
「ナギの疑問はもっともだが、私はこれに関して偽りでは無いと思っている。閣下が私に嘘をつく理由もないからな。後で見舞いに行こうと思っているから、その時に様子を見てこよう。気になるようであればナギにも知らせる。だからこのことについては案ずるな」
凪が目にした光景は真実で、しかしヒバリの命は助かっている。むしろ閣下の言い方を考えるに今の凪の方がよほど重症であるらしい。あのおびただしい血とナイフが沈み込んだ胸を考えると信じ難いが、確かに閣下がサーミフにこのような嘘を言う理由はなく、そしてサーミフにもまた凪に対してそのような嘘をつく理由はない。であるならば本当にヒバリは助かったのだろうと、多少無理矢理ではあるものの自らを納得させて凪は小さく息をついた。
「……先程、ヒバリ様の調査は終了だと、仰いましたね。では、ヒバリ様は――」
その続きを言っても良いのかと凪は視線を彷徨わせる。それをチラと見たサーミフはほんの少し視線を逸らせた。
「しばらくは閣下と共にディーディアに留まられるだろうが、少しすれば帰国される。まだ残党がいるかもしれないから警護の面でも宮殿に来ていただきたかったが、閣下は固辞された。どうにもこの宮殿はヒバリ殿にとって居心地の良いものではないらしい」
まぁ、誰だって他人の住居よりも住み慣れた屋敷の方が良いに決まっているのだが。
「だから、ナギが懸念している噂についてもすぐに消え去ることだろう」
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