288 / 301
第288話
「殿下は国を背負わねばなりませんが、私は違います。同時に、私が大切だと思うものが、殿下にとっては大切ではない。だから、殿下が私や母を疑うのは正しいことで、私が殿下に疑われていると知りながら従ったのも正しいことです。……少なくとも、私にとっては、ですが」
サーミフには凪を疑うだけの理由があり、凪もまた従うだけの理由があった。ただそれだけのこと。
「お前はもっと……感情的だと思っていた」
侍従長から紙束を受け取ったサーミフがポツリと零すのに、凪はほんの少し笑った。
そう、お互いに知らぬも同然なのだ。彼は国を守る王子様で、凪は故国から逃げてきた第三夫人の息子。そんなことしか、知らない。
ともだちにシェアしよう!

