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第289話
「確かに、殿下が思われるほど感情的ではないのかもしれません。ですが、理性的でもない。現に今も私の心は思うままに乞い願いたくて仕方がないと震えているのですから」
凪が理性の塊であったなら、ヒバリを危険に晒してしまうかもしれないと予測して行動を慎んでいただろう。それが出来なかった時点で、凪は理性的ではない。
「……隠さないでほしい、などとは言えません。殿下のお立場も理解しているつもりです。ですが、もし最後の情けを私にいただけるのでしたら、教えてください。殿下は何をお知りになりたかったのですか? 何をヒバリ様は見つけたのですか? その報告書には、何が書かれているのですか?」
サーミフが手に持つ紙束に凪は視線を向ける。予想が正しければ、それはヒバリが制作した報告書だろう。
「贋金を私に調べさせた。その意味を、教えてほしいのです」
ヒバリと通じているかもしれない。それだけでサーミフがこのように大きく動くはずがなく、偶然こんな大事になったというには出来すぎている。サーミフには贋金に収まらぬ明確な疑問があり、その答えは手に持つ報告書にある。そう凪は半ば直感で確信していた。その様子にサーミフはチラと視線を向ける。次いで手にしている紙束に視線を下ろした。一見、淡々とした文字の羅列がそこにある。
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